MENU

4章(前編) 精神療法(行動、認知に働きかける編)

目次

4.1.0精神療法の大まかな分類

精神療法、カウンセリングとは、どういったものなのでしょうか?大まかに、掴んでみましょう。まず、うつ状態になっている患者さんに治療者がかける言葉を下にあげてみます。少し回復してきてからのものです。

Dr.ラクダ
Dr.ラクダ

理解しやすいように、単純化して話します。細かい話は、おいおい話していきますね。

「軽く散歩でもしてみましょうか?」と行動に働きかける声かけです。

また、「少し真面目に考えすぎではないですか?」と自己理解を促す声かけがあったとします。

どちらも日常会話のような声かけですが、まずこの二つの大きな方向性の違いに注目してください。

こういう声かけが、共感的な雰囲気の中でなされます。「それは大変でしたね」などと共感的な声かけが行われることも多いですが、治療者の立場によっては雰囲気だけのこともあります。「共感」は、すべての立場に共通している部分ですが、ここに特化して、重視する学派もあります。

また、私たちには、ものの受け止め方、考え方という「認知」と呼ばれているものがあります。それに感情がともなっています。

最終的には、この認知が変化し、感情が整うことが治療の目標となります。

行動に働きかけるアプローチ「行動療法」と言うと、単純過ぎて正確ではありませんが、話を理解しやすくするために、ここではいったんそういう理解で話を進めましょう。

自己理解を促すアプローチは、洞察を目指す治療の方向性であり、精神分析を代表とする流派です。自分で気づいていない自分の傾向を自覚し、生き方を修正してゆくものです。「無意識」を「意識化する」ことによる回復を目指しています。

上の例では、「まじめすぎませんか?」という言葉かけが、「自己理解に働きかけるアプローチ」として挙げられています。このアプローチの代表を精神分析と言いましたが、実際には、精神分析の立場の治療者は、こういう言い方をするのは稀で、むしろ自分からそう自覚するのを待つことが多いと思います。あるいは、指摘するなら「あなたは、自分を責めてばかりいますが、本当は周りの人に腹を立ててはいませんか?」のような言い方になることが多いと思います。上の例は、日常会話に即して、治療者の対応の立場を際立たせるために用いました。

また、「ものの受け止め方、考え方」という認知を直接修正することを目指す「認知療法」というアプローチがあります。「自分はダメだ」という受け止め方を、「本当にそうでしょうか?」と揺すぶってゆくアプローチです。

「認知療法」は、一番最初に述べた「行動に働きかけるアプローチ」と相性が良く、組み合わせて用いることで「認知行動療法」と呼ばれるようになりました。現在、広く実践されている治療法です。

以上をまとめてみます。

  1. 行動療法(行動に働きかける)
  2. 認知療法・認知行動療法(受け止め方、考え方に働きかける。行動にも働きかける)
  3. 洞察志向型精神療法(精神分析が代表)(自己理解を促す)

4.1.1 行動療法

Dr.ラクダ
Dr.ラクダ

まず、古典的な条件付けの話からです。

行動療法について説明します。行動療法は、動物実験的なイメージがあったり、非人間的に捉えて悪くいう人がいますが、そんなことは無く、極めて人間的で暖かみがあり、また有効な治療法です。様々に理論化されて、たくさんの技法があります。まず、有名な「パブロフの犬」の話をしましょう。

パブロフは、犬に餌を見せると、唾液が出ることに気づきました。その後、ベルを鳴らして、すぐに餌を与えることを繰り返すと、ベルの音だけで唾液が出るようになります。これが「古典的条件付け(レスポンデント条件付け)」と呼ばれる現象です。

逆に、ベルを鳴らしたら唾液が出ている犬に対して、ベルを鳴らしても餌を与えないことが繰り返されてゆくと、次第に、ベルを鳴らしても唾液が出なっくなってゆきます。レスポンデント消去と呼ばれます。

「はじめてまなぶ行動療法」三田村 仰 著 金剛出版  

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次